やさしい音色-1-
コンラッド・・
助けて・・・
嫌な夢を見た。
コンラッドがシマロンに行っていた頃の夢。
おれはコンラッドに手を伸ばすけど、コンラッドは「あなたはもうおれの陛下ではありません」と言っ
て手を振り払う。
それは過去にあった出来事の一コマ。
だけど、それも役目のひとつでコンラッドは役目を終え、今は眞魔国に戻って再びおれのそばにいる。
コンラッドはもうおれから離れることはないと誓った。ずっと一緒だと。
なのに、おれは今でもその夢を見る。
コンラッドのことを信じているはずなのに、そのとき覚えた恐怖は未だぬぐえなくて・・・
まるで、コンラッドを信じていないように感じられてそんな自分が嫌になる。
また、村田に話を聞いてもらおう。
この夢はコンラッドがまだシマロンにいた頃からおれを苛んでいてよく村田に話を聞いていてもらっ
た。
その頃と違って今はコンラッドがそばにいるんだから本当はコンラッドに話すのが一番いいってわか
ってはいるけど、こんなことコンラッドにも話せなくって、でも一人で抱えることは出来ない。
だから、耐え切れなくなったときはときどき村田に話を聞いてもらう。
今日は草野球についての用件でどの道村田に会うし、そのついでにちょっとだけ聞いてもらおう。
そう思って村田との待ち合わせ場所に向かっていた。
待ち合わせの公園に行くと見覚えのある髪型と制服が目に入った
「おーいムラって、えぇ〜!!」
「渋谷!!」
村田に声をかけようとした瞬間、水溜りに足を突っ込んでしまった。
そして、この感覚は・・・
スタツア
おれの叫びに気付いて村田も急いで駆け寄ってくる。
あとは勝手知ったるなんとやら。
眞魔国へGOだ。
「ぷはっ村田無事か?」
「うん、大丈夫。っていうか、僕達流されてない?」
着いた先はどうやら山の中の川のようだ。
いつもは流れのない噴水とかに着くからこんなことは初めてだ。
あまり眞魔国に詳しくはないけど、ときどきコンラッドとタンデムしてるから、血盟城の周辺は大体見
覚えがある。
でも、この山は知らない。
まぁ行った山も隅々まで見たわけじゃないから全く違うとはいえないが、多分今まできたことのない山。
なんとなく、雰囲気が違う。
ここはどこか陰鬱な感じがする。
「ここどこだろ?」
「何処でもいいけど、血盟城か眞王廟の近くだといいね。このまま流され続けるわけにも行かないし、
早く発見してもらわなきゃ」
と、そのときかすかだが流れに変化があった。
不思議に思って前を見れば目の前には考えただけで気の遠くなるようなものが・・・
「でぇえぇ滝ー!!?」
そして、おれと村田は滝に飲まれてしまったのだ。
滝から落ちる瞬間、おれはコンラッドのことを思った。
そのとき浮かんだコンラッドの顔はいつもの笑顔ではなく、あの言葉を告げたコンラッドだった――