一人ぼっち
窓から外に視線をやると、赤や黄色、緑と様々な色の丸いオーナメントを飾り付けた一本の木が目に入った。
その横の木はまだ飾り付けの途中らしく二人組の衛兵が三脚に上って飾りを一つ一つ付けていく。
それでも手の届かないところはコッヒーがその役割を担っている。
…コッヒーって便利だな〜きっと部屋の外に出れば廊下にもクリスマス仕様の装飾が施されていってるのだろう。
自分が流布したとはいえ、魔族が喜々としてキリストを讃えるのはいかがなものか。
まぁ、おれがクリスマスはイエス・キリストの聖誕祭だなんてコンラッドに教わるまでは知らなかったわけだし、彼に言わせれば「魔族は魔族であって悪魔ではない」のだそうだが。
そして、ふと昨年のクリスマスを思い出した。
去年は禁忌の箱を集めるのに奔走していたが、ギュンターの「少し休まれることも大切です」の一言でこの日一日は城でゆっくり休むこととなった。
「次はどれがいいかな?」
「グレタ、これなんかどうだ?」
魔王の居室ではヴォルフとグレタがツリーに飾り付けをしている。その姿を見るまで今日がクリスマスイブに当たる日だとすっかり忘れていた。
城の者達も禁忌の箱のことで右往左往しており一年前に主が導入したイベントのことなどすっかり抜け落ちてしまっていた。そのため城内の装丁は普段と変わりなかった。
しかし、イベント好きの子供はそうもいかず、準備する気満々だった。
聡い子だから声を大にしてクリスマスの事を言ったりしなかったが、今日、おれが休みになることを耳にして「木に飾りをつけてもいい?」とヴォルフに聞いてきたらしい。
そんな娘の姿を見て何もせずにいられるお父さんじゃありません。
そこで、グレタへのプレゼントプレゼントを用意すべく、二人に気付かれないようにそっと部屋を抜け出した。
が、そこでぎくりと身体が強張った。
部屋の外にはヴォルフラムが俺の護衛をしているから大丈夫と思っているのだろうか、誰もいなかった。そう、誰も。
こっそり抜け出ても、必ずおれの行動に気付いて側にいた彼がいない。
もう、彼がいないことには慣れたつもりだった。寂しく感じる頻度も、その強さも徐々に減ってきていたのに、なぜ、今こんなにも孤独を感じるのだろうか…
結局、グレタへのプレゼントは厨房でラザニアさんたちに手伝ってもらいながら焼いた焼き菓子になった。
街には、買いにいけなかった。
いままでは、こっそり彼が街へと連れて行ってくれ、ちょうどよさそうな店も教えてくれた。
おれは、一人で出かけられるほど街に詳しくないし、お金も持っていなかった。
お金だっていつも
「別に気にしなくていいんですけどね。…貴方がそんなに気にするなら、あとで貴方のお小遣いから引いておいてもらうようグウェンに言っておきますよ。」
と言って彼が払ってくれていた。
自分は、結局彼がいないと何も出来ない。どれだけ依存していたのだろうか。
その後、グレタに菓子をやり、喜ぶ顔を見て心が温まったけど、どこかにほぐれないしこりが残った。
「ユーリ、寂しいだろうが今日はグレタと一緒に寝てくる。寝冷えしないよう気をつけるんだぞ」
そう言って、ヴォルフラムはグレタお気に入りの本を持って部屋を出て行った。いつもはヴォルフラムと別々に寝ることになると、安眠できるとホッとするのだが、一人になった途端昼に感じた寂しさが込み上げてきた。
一人であの部屋にいるのが嫌で部屋を抜け出し、ふらふらと彼の部屋まで足を運ぶ。
しかし、彼の部屋のドアに手を掛けたところで、ピタリと動きがとまる。
一体何をしているのだろう。
扉を開けたって、彼はいない。
寂しさが増すだけじゃないか。
戻ろう、イベントで感傷的になっているだけだ。
バカバカしい、さぁ、戻るんだ。
そう、自分に言い聞かせるが、ドアから離れることは出来ても、自分の部屋に向かうことは出来なかった。
彼の部屋に行くこともできず、かと言って自室に戻る気も起きなくて、見回りの兵士に見つかるまで、ただ呆然と廊下に立ち尽くしていた。
結局、その日は兵士に部屋に連れ戻されてからも眠れず、今のように外を眺めたまま夜が明けた。
去年のことを思い出すと、胸が苦しかった。
過ぎ去って一年経ってもなお癒えないしこり。
「ユーリ、どうしました?」
肩に、手を置かれて、いつの間にかいれてた力を抜く。
「ん〜ん。なんでもない。ちょっと過去を振り返ってただけ」
肩に、背中に、彼の温もりを感じる。大丈夫。
「…ねぇ、コンラッド。あとで、グレタへのプレゼント、買いに行こ?」
「はい。」
大丈夫。自分は一人じゃない。今は一緒にいる。
いかがだったでしょうか?
なんか、予想外にしんみりとしてしまった;;
それもこれも私が今年も一人でクリスマスを迎えているからなんでしょうか??
えと、なんかいつもより短い感じに仕上がったんでおまけもつけてみました。
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Photo:Art-Flash