SIDE コンラッド
昨年の今頃はまだ、シマロンにいた。
一度死んだような身、そう思えばなんでも出来たが、やはり、ユーリの隣にいるのが自分ではない――否、国を裏切った自分は二度と彼の国へは戻れないと思うと自棄酒をしたくなることもしばしばだった。
その日も、自棄酒とはいかなかったが、多少飲みたい気分になり、人払いをして一人静かにグラスを傾けていた。
暖炉に火をくべもせず、明かりといえば机の上においてある蝋燭一本という部屋の中で、何気なく外に目をやった。
窓の外には、ちらちらと雪が降り始めていた。
幼いころから旅をしていたし軍に入ってからも野宿をすることが多かったため、天気を読むことには長けており、雪が降ることも薄々感じていたから驚きはしなかったが、雪を見ていると自然と眞魔国にいたときのことが思い出された。
積雪に喜んだユーリが日課のロードワークを返上して雪だるまを作ったこと、起きてきたヴォルフラムたちが混じって雪合戦が始まり、それが拡大して城の者たちを巻き込んでの大騒ぎになったこと、そのせいで次の日にはユーリを筆頭に城中でかぜっぴきが増えたこと―などなど。
そんな幸せな日々を振り返ると、クスリと笑みが零れた。
そして、ふともうすぐクリスマスであることに気が付いた。
クリスマスは地球の、異世界のイベントであるため、こちらの世界では当然のごとくない。
眞魔国もユーリがいたからこそ昨年は急遽クリスマスパーティーを行ったのだ。
皆でテーブルを囲み、談笑し、プレゼントを交換しあった。珍しく、グウェンダルのあみぐるみが元の形がわかったり、ヴォルフラムのプレゼントの絵は何が描いてあるか全くわからないと囁きあったりもした。夜は寝台の中でクリスマスと魔族について語ったりもした。
今年は、どんな風になっているのだろうか。
そこまで思い至ったところで、自分にはこんな感傷は無用だ、今すべきことは一刻も早く箱を集めユーリの元へ届けることだと思い、グラスに残っていた酒を一気に飲み干し就寝した。
一年前は、もう二度と戻れないと思っていた。けれど、ユーリのおかげで今はこの国に戻ることが出来た。以前と同じように、彼と共にいる。しかし、再び彼の元に戻って過ごすうち以前のままだという考えが間違っていることに気が付いた。
何気ない瞬間に、ユーリは思いつめた顔をして、何かを飲み込もうとしている。
その度に俺が近くに行くと、安心したように息をつき、すこし潤んでいるように見えなくもない瞳で見上げてくる。
その瞳を見るたびに、旨を抉られるような気持ちになった。
そして、こんな目をさせたかったわけではなかったのだと、深く後悔する。
これ以上、彼の瞳を曇らせたくない。
何があっても二度と離れたりはしない。
次男独白。
一応、一人ぼっちとセットですが、お持ち帰りはしてもしなくても構いません。おまけですから。
あ、配布期間は一人ぼっちと同じですよ。
背景、お持ち帰りしていただけます。が、お持ち帰りページに↓の素材サイト様を必ずリンクしてください
Photo:Art-Flash