sanctus
「サンクトゥス サンクトゥス サンクトゥス・・・」
「んう??コンラッド・・・何?ソレ・・」
今は深夜12時。さっき俺のデジアナ時計がピッと音を立ててそのことを示したばかりだ。
俺はといえば、何故か所有者の俺を差し置いて魔王専用ベットを我が物顔で占領している黙っていれば天使、
口を開けば我侭プーこと自称婚約者のヴォルフラムにベットから蹴り落とされた挙句、名付け親兼保護
者兼護衛兼野球仲間兼恋人のコンラッドの部屋に逃げ込んでいた。
そうしてようやく恋人の横で髪をゆったりと梳かれながらまどろみかけたとき、コンラッドがポツリと聞きな
れない言葉を発した。
「サンクトゥスとはラテン語で‘聖なるかな’の意味だそうです。・・・ふと思い出しまして。」
ラテン語・・・いくら勉学が苦手な脳筋族の俺でも知ってる。これは地球の言語のひとつだったはず。今はもう
存在しないと聞いたような聞かなかったような・・・
「ふ〜ん。んで、何でコンラッドがそんなこと知ってんの?まさか、地球にいたときにラテン語も勉強したの?」
「いいえ、アメリカにいた頃連れて行かれた教会で聞いたんですよ。」
アメリカ生まれの帰国子女といえどそれはかなり小さい頃の話で、実際には日本育ちの俺にはキョウカイは全
くといっていいほど縁のないとこだ。
彼もそんなとこに行きそうな感じはないが・・・と、言うか・・・
「教会?魔族のアンタが?」
プッ
魔族に神をたたえる教会とはあんまりにも似合わなくて思わず吹き出してしまった。
そんな俺を見たコンラッドは傷跡の残る眉をほんの少し下げて苦笑する。
「確かに俺に教会は似合わないかもしれませんね。俺がたたえるのはユーリだけだから」
さらりと気障な事を言ってくれる。言われたこっちはコンマ1秒でゆでだこ状態だ。
「コ・・コココココ」
「ユーリ?どうしました?顔が真っ赤ですよ?ああ、それとユーリ、悪魔と魔族は別物ですよ。俺達は決して
悪魔じゃありません」
一瞬、夜は悪魔(みたいに意地悪)になるくせに・・・と思ったのは秘密だ。
「う〜そう言われりゃそうなんだけど、なんかなぁ。」
わかってはいてもなんとなく腑に落ちないのだ。
「ねぇ、コンラッド。それは同じことをただ繰り返して言うだけなの?」
別に興味があるわけでもないし、特に知りたいわけでもない。が、コンラッドの話が聞きたくて訊ねた。
「いえ、ちゃんと続きがあります。
聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
万軍の神なる主 主の栄光は天地に満つ
天のいと高きところにホザンナ
ほむべきかな
主の名によりて来たるもの
天のいと高きところにホザンナ
・・・ユーリ?」
「ん、それってさ・・・眞魔国だと眞王陛下になるのか・・・な・・・?」
コンラッドが話している間も髪を梳き続けていたのと、もともとまどろみかけていたのが相俟って俺は話途中
にもかからず眠ってしまった。
「俺にとってはユーリ・・・あなたですよ。すべての誉れと栄光をあなたに・・・」
その夜の二人には穏やかな眠りが訪れたという。