一夜の逢瀬



ふと気が付くと、おれは川岸に立っていた。
周りは暗く、外灯もなく、人もいない。周りを照らすのは淡い月の光と星々の輝きだけ。
足元の草では虫が美しい鳴き声を披露している。

ここは・・・・??

目の前の川はさらさらと静かに音を立てて流れている。
向こう岸に行きたいのに、行くことができない。
この川には橋がないから。
川の中を突っ切ろうともこの川は見た目以上に深く、川底の流れは早く向こう岸にたどり着くのは不可能だ。
川辺に佇み、水に手を浸す。
何故だろう、向こう岸に行かなくてはならない気がする。
どれくらいそうやっていただろう、じっと川面を見つめていると向こう岸に人が来た気配がした。
ゆっくりと顔を上げると、そこにはずっと会いたいと願っていた人がいた。

「コンラッド・・・」

「ユーリ?」

コンラッドの顔には驚きの色が出ていた。

「コンラッド、コンラッド!!」

その顔を見た途端、身体が動き出し、川の中に足を突っ込んでいた。

「ユーリ!ダメだ!!この川は深すぎる!」

コンラッドも慌てて川に飛び込んで来る。
すると、川の水はモーセがエジプトを出るとき海の水が割れ道が出来たように、川の水がすっと引いていった。
そのままおれは、コンラッドに駆け寄りその胸に飛び込んだ。

「コンラッドぉ・・・」

いつの間にかおれの目からは涙がこぼれていて、コンラッドの服を濡らしてしまった。
けれど、そんなことに構ってられなくて、コンラッドが幻ではないことを、消えてしまわないことを確かめるように強く抱きしめた。

「・・・ユーリ・・・」

始めは宙に浮いて留まっていたコンラッドの手も、ゆっくりと優しくおれを抱きしめてくれた。

「会いたかった。ずっと、ずっと」

そう言って頭を胸にすり寄せれば、ぎゅっと抱きしめてくれる。

「俺もです。」

その後はただ、互いの身を飽きもせず寄り添わせていた。



「・・・ーリ、ユーリ!!起きろ、このへなちょこ!」

「ん、ヴォルフ?」

耳元でキャンキャンと吼える声が聞こえる。

「執務中に寝るとはどういうことだ!!だからお前はへなちょこだと・・・ユーリ、お前泣いていたのか?」

どうやら、書類にサインをしているうちに転寝をしていたらしい。目元を拭うと手が濡れて、夢を見ながら泣いていたことを知る。

「・・・たいしたことじゃないよ。ちょっと夢を見ただけだから。」

あんな夢を見た理由は、今日が離れ離れになった恋人に年に一度だけ会える日だから。



七夕のフリーSSです。配付期間は14日までです。ご自由にお持ち帰りください。
本当は明日アップしたかったのですが、今日の夜から日曜までネット落ちするので、今日アップしました。


back