春の日差し






春を一言で表すならば「穏やか」だろう。

夏の太陽のように情熱的なギラギラと肌を焼く日差しもなく、冬の空気のように肌を切り裂く冷徹な風もない。
春の太陽は惜しみなくすべてを照らすけど、その日差しはいつも温かく見守ってくれている母親のようで、風はやわらかく頬を撫で髪を梳き、小鳥の歌声はまるで子守唄のようで心地いい安心感を与えてくれる。
どの季節の花も目を楽しませてくれるけど、やはり一番は春だろう。
春の花は淡く、けれども誇らしげに咲いている。
様々な色の花がいっせいに咲き乱れる様はとても幻想的で、多くの人が心の奥底で求めている楽園を体現したかのようにこの世のすべてを一瞬忘れさせてしまう、いかなる魔術をもってしても敵わない魔力というか、不思議な力を持っている。


ふと、日本人が物事のスタートに春を選ぶのがわかった気がした。
春は凍て付くような冬の寒さで疲れた人々の疲れを癒すと共に、新たな活力を与えてくれる。
それは、気候による疲れだけでなく他の出来事に対してもだ。
例えば、仕事とかに失敗して落ち込んできても暖かい空気に触れ、鮮やかな色を見ていると自然とまた頑張ろうという気持ちになってくる。
そんなことを考えると春は自然そのものが人を励ます要因を含んでいる。
先人はそのことに気付いていたのか、はたまた無意識なものだったのかはわからないけれど春ほど旅立ちにふさわしいものはないと感じ取ったのだろう。

あぁ、自然とはなんと偉大なんだろう。
きっと、どんなに人々が逆らったところで自然に打ち勝つことは出来ないだろう。
どんなに暑さや寒さをしのぐ機器を開発したところで、その開発への意欲を生み出してくれるのは結局のところ自然なのだから。
人々は自然と闘っているようで、自然に生かされているのだから。


ガラにもなくいろいろと考えてしまったけど、要は「春が好き」なのだ。

だから、心配性の護衛が、執務室を抜け出しテラスから持ち出したラグに座り眠りこけているおれを見つけるまではこうしていよう。
時間は決して多いわけじゃないけど、もう少しだけ、もう少しだけ。
少しでも長く。
この穏やかな陽だまりでまどろませていて。



いかがだったでしょうか?
春の穏やかな時間を過ごすユーリのお話でした。別に○マ・ユーリじゃなくてもいい気がしないでもない感がたっぷり。


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